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背徳グルメ
~EP
1:ハンバーガー(オールフライ)~

ジャンクなグルメを食しながら脳内実況する疲れた社畜の一人語りです。

飯テロ注意。
※作中のグルメは自己責任です。安易に真似しないこと。

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・一人称、語尾変更、アドリブ→○​​

◇登場人物◇

仲間(なかま):

(性別不問)

中間管理職の社畜。最近は部下のやらかしの尻拭いをさせられ、疲弊しきっている。自然派の家庭で育った反動で、ジャンクなグルメに惹かれがち。

背景→AIPICT(https://aipict.com/)様

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自然派志向の親に育てられ、健康的な子供時代を送った。その反動で、私は背徳へと駆り立てられた。油マシマシ塩分過多、健康度外視の「ジャンクフード」へと。

「お世話になっております。株式会社東山木全(とうさんもくぜん)の仲間(なかま)です。……大変申し訳ありませんでした。ええ、今回の件は深田(ふかだ)の……いえ、私の責任です。……仰る通りでございます。……返す言葉もございません。本当になんとお詫びすればよいのか……。は、ははっ」

思わず、乾いた笑いが出た。いかんいかん。笑っていては誠意が伝わらないと、この間上司にこっぴどく叱られたばかりじゃないか。

「このことは社内で共有いたしまして、二度と同じ事のないよう徹底いたします。明日、こちらの負担で清掃を入れることになっておりますので。また後日、顛末書(てんまつしょ)を提出させていただきますので、どうか何卒ご容赦いただけないでしょうか。

……はい。……ええ。仰る通りでございます。……ごもっともでございます。

……はい。もちろん、来週月曜の十時に、上野(うえの)とお詫びに伺いますので。

……かしこまりました。……寛大なご対応、ありがとうございます。……はい、それでは失礼いたします。」

……長かった。なんだ、この疲労感は。大体、部下のアイツ―深田が勝手にやらかしたことじゃないか。なんだよ、管理物件を部外者に貸し出してたって。内見しようとしたら知らないおっさんが寝てたとか、前代未聞を通り越してもはやホラーだよ。

そんなクレイジーな部下の尻拭いは、だいたい私に回ってくる。中間管理職って本当にいいことがない。取引先からは詰められ、上司からはどやされ、何も知らない社長は他人事。あー、昇進なんかするんじゃなかった。

時計を見ると二十一時。このあたりの飲食店は軒並み、ラストオーダーまであと三十分と言ったところか。何を食べようかと考える気力もわかない。なのに、腹の虫は元気に鳴く。
ああ~……おなかがすいた。

こんな夜には体に悪いものが食べたい。糖質? 血糖値? そんなの知らない。今はただ、こてこての油とましましの塩分とほくほくの炭水化物でお腹を満たしたい。自分の寿命がどうなろうと、欲望の赴くままに貪りたい。

よし、ハンバーガーだ。バーガーチェーンならきっと夜遅くまでやっているはず。確か駅前に、この辺ではちょっと珍しい店ができたはずだ。いい機会だから行ってみよう。

……着いた。「ジャングルバーガー」。
アメリカ発祥と聞けばとにかくビッグサイズを想像するが、このジャングルバーガー、通称「ジャンバー」はそれにとどまらない。なんとカロリーも規格外らしい。

さてさて、まずはメニューをチェックだ。一番人気はー……っと。「ダブルカマンベールチーズバーガー」、お値段1980円、2345キロカロリー。……やばいな。もはやどっちが値段で、どっちがカロリーなのかわからなくなってくる。

そういえば、ジャンバーが出す新商品は何かと話題になる。例えば「焼きラーメンバーガー」や「揚げ餃子バーガー」など、やっつけ感のあるものばかり。SNSでは「小学生が考えたのか」とたびたび炎上していた。

さらにもう一つ、ひどい―いや、すごいと言われているのは、無料のサービスだ。具材の増減はもちろん、「オールフライ」という頭のおかしいオプションも存在する。

オールフライとは、その名の通りハンバーガーを油で揚げることである。これまた背徳感があり、はまる人ははまるらしい。が、頼んだら最後、人の道を踏み外すという噂もまことしやかにささやかれていた。

うーん。行くか? 行っちゃうか? オールフライ。……いや、待て待て。やったら絶対に戻ってこれなくなる。うん、やめよう。いくらなんでも。

店内はまばらだった。カウンター上のスクリーンには、待ち時間と番号がいくつか表示されている。
よし、決めた。私は注文口へ向かった。

「すみません。ダブルカマンベールチーズバーガーのセットを一つ。サイドはポテトアンドオニオンフライと、レモネードスカッシュ。……えっと、以上でお願いします」

かしこまりました、と店員さんが注文を復唱する。それを聞いているうちに、だんだんと後悔が押し寄せてきた。

あれ? せっかくのジャンバーなのに、本当にこれでいいんだろうか?
いや、さすがにオールフライはやりすぎだろう。最近揚げ物がきつくなってきてるし。

……でも、体はこんなにもジャンクなものを欲しがっているのに? 
いや、だけど節度ってものがある。揚げハンバーガーなんて絶対に、体に悪そうだし。

……いやいやでもでも、せっかくの華金だし。今更、100だの200だの、微々たるカロリーを気にする意味とかある? もはや、誤差では? 何より、無料だし。そして今日、私、頑張ったし。


……ええい! もう知らねえ。いけ! やっちまえ!!

「あの、すいません。……ハンバーガー、やっぱオールフライでお願いします」

その途端、店内がざわついた。店員さんは、驚いた目でこちらを見ている。
あれ? オールフライを頼む人って、実はそんなにいないんだろうか?

思わず背後を振り返ると、後ろに並んでいたお兄さんも驚愕の表情だ。

いや、だって、メニューに書いてあるし。頼む人も……いるのでは?
え? なんで? どうしてそんな珍獣を見るような感じなんですか? 頼むからそんな目で見ないでほしい。 

「……あ、あのお?」

すると店員さんは察したとばかりに頷いた。そして、厨房どころか店内に響き渡る声で「オールフライ、入りまあああす!」と叫んだ。

あれ? ……どうしよう。私は今、とんでもないことやらかしてしまったのではなかろうか?
急に、冷や汗がでてきた。

会計を終えて、席に着く。スマホを開くと、一応、上司に事の次第を報告するメッセージを入れた。

さて、もう自由だ。SNSを開くと「しごおわ! がんばったから自分にご褒美。ジャンバーでオールフライ!」と投稿した。

それから数分もしないうちに、フォロワーさんから爆速でコメントがきた。
「正気ですか? あの……生還できるといいですね?」

そんなに、やばいのだろうか。不安に押しつぶされそうになっていると、あっというまに私の番号が呼ばれた。席を立ち、ハンバーガーを取りに行く。

「……お、おお! なんだ、こりゃ」

見た瞬間、度肝を抜かれた。トレイには、きつね色に揚がった巨大な塊が鎮座していた。掌どころか頭の大きさくらいありそうだ。衣で見えにくいが、中には分厚いパティが三枚。その間にはカマンベールチーズが交互に挟まっている。野菜は申し分程度のレタスのみ。
そして傍らの大きな紙袋からは、これまた巨大なスティックとリング状の揚げ物がはみ出ている。極めつけはしゅわしゅわという音が聞こえてきそうな黄色のレモネード。見るからに酸っぱそうだ。

油の匂いが空腹を刺激してくる。もう限界だ。私は席に着くとすぐに、手を合わせた。

「いただきます」

それから、巨大なハンバーガーを凝視。大口を開けたところで、全ての具材に到達できる気がしない。それでもかぶりつく。

……う、美味い。美味すぎる!
サクッと揚がったバンズは、外はカリッ、中はふわっとしている。パティは肉厚でジューシー。噛んだ瞬間から透明な脂がしたたり、牛肉の旨みが広がる。その間に熱々のカマンベールチーズがとろけて、癖がありつつも濃厚なハーモニーを奏でている。さらには全体を包むサクサクな衣が最高にジャンクだ。

これは美味い。無我夢中で頬張る。こってりとした脂が口に残るが、ささいな問題だ。しゅわっと弾けるレモネードスカッシュが喉を潤し、爽やかにリセットしてくれる。

次いで、絶妙な塩加減のポテトが加われば、もう手が止まらない。細いのと太いの、混ざっているのがいいな。カリカリとほくほくが、両方楽しめる。さらに、余ったカマンベールチーズにディップすると……うーん、たまらん。相性抜群だ。


ザクザクのオニオンリングも口に運ぶ。……ああ、幸せだ。塩味の中、たまねぎがほんのり甘い。それをレモネードで流し込む。口で弾けるしゅわしゅわパンチが、喉まで炸裂。目まぐるしく変わる味覚に、お口の中はもうカーニバルだ!

うーん、やはり炭酸と揚げ物は唯一無二の親友。そうそう、これこれ。これが食べたかったのよ。脳にガツンとくる背徳感が、たまらない。つくづくギルティな組み合わせだ。

半分ほど食べ進めたところで、卓上のアイテムが目に付いた。タバスコ、黒胡椒、岩塩、ケチャップ。このありあまるボリュームなら、味変し放題だな。
さあ、まずはタバスコから。どばっと行かないように、慎重にチーズへオン。
……うーん、酸っぱ辛さが絶妙にマッチ。これは癖になりそうだ。


まだまだ楽しむぞ、と思ったところで、スマホの通知音が鳴った。

「いや、なんなんだよ、こんな時に……」

どうやら、先ほど報告した上司からメッセージが来たようだった。面倒だが、一応確認しておかないと後が怖い。

渋々、画面をチラ見した瞬間、悪魔の四文字が目に入ってきた。

「お疲れさまでした。総務からの伝言を忘れていましたが、明日は健康診断があります。忘れずに行ってきてください。」

レモネードを吹き出しそうになり、慌ててむせた。いや、遅すぎるだろ。明日? 午前中だとしたら、あと十時間くらいしかないんだが?

あー……もう。

いや、スマホを見てしまった私が悪い。


今だけはこのカロリーも、明日の健康診断も、見なかったことにしよう。宴は誰にも止められない。私は目を瞑ると、再びハンバーガーにかぶりついたのであった。

​ーFin.

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