お前かい。自分を星座にして欲しいだなんてのたまう不届き者は。
まあ、他ならぬあいつの頼みだから聞いてやるが……正直、今の夜空は手一杯でな。ご覧の通り、芋の子を洗うが如くの大渋滞だ。
それに、あの地球とかいうちっぽけな星から見えるようにしたい、っていうなら場所もよく考えなくちゃいけないね。あの星は自分でも回転しつつ太陽の周りをぐるぐる回ってるんだ。季節や場所によっては、見えない場合も出てくるだろうな。
ああ、そうそう。今の空きは確か……あそこか、ここだ。そうだな、地球の真上か真下でなければ見えないだろうな。
それは困る? ワガママだな。仕方ないだろう。こっちはそろそろ隠居しようかと思ってたのに、突然お前が転がり込んできたんだ。嫌なら他を当たっておくれ。
はいよ、こっちにするんだね。
そういえば、こういうことはあんまり詮索しない方がいいんだろうが……お前はどういうツテであいつと知り合ったんだ?
ほほう、なるほど。それで良い仲になったのに、あの方のお怒りを買って死んでしまったというわけか。可哀想に。ま、ここら辺ではよくある話だな。
さあ、話を進めようか。お前にやれるのは白色の明星。こいつはうちの中でも一級品だ。それから橙色の巨星。そして赤色矮星(せきしょくわいせい)。こいつらは超新星爆発寸前だから気を付けな。なあに、ほんの数百年くらいは持つはずだ。
……老いぼればかり? すまんすまん、星の中でも少子高齢化が進んでいるものでな。
でも、老いた星の方があの地球とかいう星からは明るく見えるから、見付けやすいだろう。もしかすると、今後はお前が夜の星空の標となるかもしれない。まあ、あのわかりやすいシリウスにはかなわないだろうが。
あ、そうそう。周りには凶暴な星座もいるから、くれぐれもトラブルにならないように気を付けておくれ。
では、改めて。星座を司る私が、今日からお前を一星座と認めよう。
……ふう。やっとひと仕事終わった。しかしあいつにも困ったものだな。何でもかんでも星座にするって言って、次から次へとこいつらを押し付けやがって。これじゃあ私のスペースが狭まるばかりじゃないか。宇宙だけにね。って、やかましいわ! 全く、あいつがいないと1人漫才になるじゃないか。一体、いつ戻ってくるんだか。
ここも、だいぶ賑やかになったものだな。みんな私の大切な星座だ。まあ、いいさ。私は私で、せいぜいこいつらの観察にいそしむことにするよ。
……ふふ。なんだかんだ言って、私もここが好きなんだろうな。
ーFin