
科学者:
出来た……出来たぞ! こいつは会心の出来だ。前回の試験薬……確かロット番号1153‐2960(いいゴミ作ろう)は、被検体マウスによる実験結果も上々だったな。ああ、早く試したくてうずうずするな。
しかし、そろそろマウスもモルモットも飽きてきたな。同じ生き物とは言え、人間が使うものなんだから、人間に試さなければ意味が無いじゃないか、全く…。
とは言ったものの、最近は人権団体もうるさいわ、モニターを募集しても来ないわで踏んだり蹴ったりだな。裏のツテを頼って囚人を連れて来るのもいいが、若くて健康体とは限らないし……うーん、何かと面倒だな。
そうだ! 他人にやろうと思うからこんなに手間取るんだ。私が私にやる分には、何も問題ないじゃないか。ちょうどここに、私が発明した世にも素晴らしいタイムマシーンがある。こいつで過去にひとっ飛びして、まだ若く健康な私に実験の協力を仰げばいいんだ。ふふ……我ながら天才じゃないか。
そうと決まれば善は急げだ。スイッチオン!
ー過去へ飛ぶ
科学者:
着いたか。おお……昔の研究所じゃないか。やはり私の発明品は素晴らしい。どうやら無事に来れたようだな。しかし、この装置は……何だ?
若き日の科学者:
おっ。来たな。いらっしゃい。
科学者:
おお、過去の私じゃないか! 我ながらイケているな……いや、今はそんな場合ではない。そう、今日は君に頼みたいことがあって来たんだ。
若き日の科学者:
へえ、頼みたい事ねえ。てことは、あんた未来の私なのか。道理で、親に似てると思ったよ。
科学者:
ハハッ、そいつは愉快だな。
あ~……それで、だ。ここに私が発明した最高の薬がある。まあ、飲めば全てわかるだろう。これは未来の科学に貢献する人助けだと思って、試しに飲んでみてはくれないか? 同じ私ならきっとわかってくれるはずだ。この薬が社会の発展のために必要だと。
若き日の科学者:
ふん……ははははははは!
科学者:
な……何がおかしいんだ、私。
若き日の科学者:
いや、歳いっても考えてることは変わんねえんだと思ってさ。なあ、あんた……いや、未来の私。あんたがやって来たこの装置なんだけどさ。実は、未来の人間を召喚する装置なんだよ。
科学者:
……何? どういう事だ?
若き日の科学者:
という訳で、これ。よろしくお願いしまーす。(薬を飲ませる)
科学者:
な……何をする! ぐはっ…… (絶命)
若き日の科学者:
あーあ。今回も失敗かあ。ま、送り返す方法わかんないから、別にいっか。しっかし、私も懲りないよなあ。これで何回目よ? どの未来でも同じ発想になるの、チョーウケるんですけど。ま、科学の発展のためなら、未来の私だって本望っしょ。あ、助手君~。これ、片付けといて。
ーFin