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ドラマティック人狼

◇概要◇

誰もが知る「人狼ゲーム」。それがもしも現実に起こったら、悪夢となる―。


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30分程度。
・性転換→×
※但し、演者の性別は問いません。
・一人称、口調、語尾等変更→○
・アドリブ→キャラクターのイメージを大きく損なわない程度であれば〇

◆登場人物◆

京極(きょうごく):
(男性)

占い師を名乗り出たが実は狂人。口がうまくカリスマ性があり、とらえどころがない。

大神(おおがみ):
(女性)

人狼。丁寧な物腰で、冷静かつ客観的に意見をまとめる。終盤に豹変。襲撃時の咆哮だけ得意な人に任せても○。

甲斐(かい):

(男性)

村人。論理よりも直感で動くタイプで、一度信じると頑固。終盤はひたすらおびえて叫ぶ。

早乙女(さおとめ):
(女性)

村人。勝気だが動揺や混乱を必死に抑えて気丈に振舞っている。襲撃されるときの絶叫あり。

猪狩(いがり):
(性別不問)

狩人。気弱で寡黙な少年。台詞量はとても少ないので兼任も可。
※兼役(案内人)どこからともなく現れ、この世界に誘った案内人。

◇用語解説◇

占い師:毎晩任意の人物を、人狼かそうでないか占うことができる。
狂人:人狼に味方する村人。占われても「人狼でない」と出る。
狩人:毎晩任意の人物を人狼の襲撃から守ることができる。ただし、自分が襲撃されても身を守ることはできない。

吊る:昼間は人狼と疑われる人物を誰か一人処刑しなければならない。
噛む:毎晩人狼は誰か一人を襲撃する。
勝利条件:村側→人狼を残らず処刑する。
     人狼側→人狼の人数と村人の人数が同数になる。

CO(シーオー):カミングアウトの略。自らの役職を公言すること。
白:占い結果が「人狼でない」と言うこと。
黒:占い結果が「人狼である」と言うこと。

囲い:主に狂人が人狼を真の占い師に占われるのを防ぐため、占って白を出しておくこと。
騙り:自分の役職を隠して他の役職を名乗り出ること。(EX:狂人が占い師を名乗り出る、など)

 

◆本シナリオの説明◆

この村は9人村(占い師1、人狼2、狂人1、狩人1、村人4)です。初日占いあり。人狼と狂人はお互いに認識できません。(どちらも誰が狂人もしくは人狼かはわからない)
本シナリオは三日目の朝から始まります。それまでの流れは以下の通りです。

・一日目狂人→村人①(白)を占う。占い師→早乙女(白)を占う。
・処刑→ランダムで偶然にも人狼①を処刑
・襲撃→村人①
・二日目狂人&占い師→甲斐(白)を占う。
・処刑→ランダムで村人②を処刑
・襲撃→占い師

(以下、配役)
・占い師→占部(うらべ)
・村人①→丙(あき)
・村人②→丁野(ちょうの)
・人狼①→有留(ありとめ)

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猪狩(案内人):
(案内人と兼役)ここで起きることはすべて現実。痛みも、恐怖も、焦燥も、絶望も。ふふっ。楽しみですねえ。時にはしおらしく、あるいは大胆に。そして、時には狂おしく。貴方の役割を全うしてくださいね。ああ、少し出遅れてしまいましたね。もうゲームは始まっていますよ。一人吊るされ……一人噛まれ。昨日もまた同じように、一人吊るされ一人噛まれてしまいました。さあさあ、まだ間に合います。早く、早く。それでは、ドラマティック人狼へようこそ。


ー(間)

早乙女:
(おびえたように)また一人、死んだ……。昨日も、今日も。噛み殺された死体……う、ううっ。むせかえるような血の匂い。それに処刑された目が……首をっ……吊られて……あ、ああ……ううっ! 考えただけで気持ち悪くなってきた。

猪狩:
(独り言っぽく)ふう、ようやく朝か。なんとか、守り切ったな。でも……あっちが噛まれてしまったか。と言うことは……もしかして、僕の選択は間違っていたのか?

甲斐:
もう誰が噛まれて、誰を処刑したのかもわかんなくなってきたぜ……ははっ。毎日誰かしら死んでいくなんて、ほんと気が狂っちまいそうだよ。

大神:

昨夜は占い師だとCO(シーオー)ーカミングアウトしていた占部(うらべ)さんが噛まれてしまいましたね。おとといは、京極(きょうごく)さんの占った丙(あき)さんが噛まれて……。もう、わけがわかりません。いったい、真の占い師はどっちなんでしょうか?

早乙女:
ねえ、甲斐(かい)。昨日は二人ともあんたを占ったからさあ。あんたは確実に村人ってわけだ。そろそろ今日あたり、噛まれるんじゃない?

甲斐:
バ、バカ!怖いこと言うなよ!!

京極:
はいはい、みんな落ち着いて。少し状況を整理してみようか。まず一日目。占い師だと名乗り出た者が二人いたね。俺と占部(うらべ)さん。一日目の占い結果は、占部さんが早乙女さんを占って、人狼でないーつまり、白と出た。対する俺は丙(あき)さんを占って白と出た。その日の処刑は、まだ占われていない人からランダムで投票した結果、有留(ありとめ)さんになった。そしてその夜、俺の占った丙(あき)さんが噛まれてしまったと。ここまではいいかな?

甲斐:
うわ……もうこの時点で、何言ってんのか全然わかんねえや。

早乙女:
ちゃんと聞きなさいよ。あんた、自分の命が懸かっているって、ちゃんとわかってる?

甲斐:
へいへい……。

大神:
ちょっと、京極さん。あなたはまだ真の占い師だと確定していない以上、それ以上お話を続けていただくのは危険だと思います。騙されやすい人は特に、あなたに流されてしまうんですから。私もまだ占われていないのでグレーではありますが……客観的事実だけを述べたいと思います。

京極:
お、大神(おおがみ)ちゃんは慎重ですねえ。では、お好きにどうぞ。

大神:
ええと、次の日の二日目……つまり昨日ですが、占い師お二人は偶然にも甲斐さんを占い、お二方とも彼は人狼でないと仰いました。……これ。前日に誰を占うか決めていなかったのは、痛恨のミスでしたね。そして、処刑は、まだ占われていない方の中から、ランダムで選ばれた丁野(ちょうの)さんになりました。そしてその夜、占い師とCOされていた占部さんが噛まれたと。ここまでお間違いないですね?

甲斐:
あ、ああ! なんとなくわかったかも。つまり、占部さんが真の占い師だったから噛まれたってことだよな?

早乙女:
ちょっと待って。このルールって書いてある張り紙を確認してみるわ。えーっと、なになに? ……狂人は誰が人狼かわからない。同じように、人狼も誰が狂人かわからない、か。てことは、人狼はどっちが真の占い師かわからないまま噛んだってことなのかしら?

京極:
早乙女ちゃんのおっしゃる通りだよ。ベグと言って、どっちが真かわからないまま噛むことはあるみたいだね。それで真を噛めたら万々歳だし、仮に狂人を噛んだとしても、残った占い師の信用を落とすことになるからね。混乱させるには十分と言えるだろうねえ。

大神:
それより、京極さん。今日の占い結果をまだ聞いていないんですが?

京極:
ふふっ……そんなに怖い顔をしないでよ。可愛い目を三角にしても可愛いだけだよ?え、なになに?そんなに聞きたい?

早乙女:
こりゃ、残ったのは狂人かあ。ねえ、さっさとこいつを吊りましょうよ。なんかムカついてきたわ。

甲斐:
だ、だめだ! 京極さんがいなくなったら、誰がこの場を仕切るんだよお! 俺、もうわかんねえよお……。

大神:
ちょっと、甲斐さん。あなたに白を出したのは占部さんも同じでしょう?

甲斐:
でもでも~。占部さんってなんか高圧的で怖かったじゃん。俺の直感だと、なんか違う気がする。うん、あの人は狂人だった気がする。

早乙女:
あんた、少しは頭使ったらどう? 確かに占部はあれだったけど、でも京極の方が胡散臭いじゃない! ほら、占い結果をすぐに言わないところとか……どう考えても怪しすぎるでしょ。


京極:
おやおや。そんなことを言われても困るんだけど。俺は元々そういう性格なんでね。さてさて、皆さん。先ほどから一言も発していない人物がいらっしゃいます。どなたかわかりますか?

猪狩:
ーっ?!

大神:
え? 嘘ですよね? ま、まさか猪狩(いがり)さんが?!

京極:
その、まさかだよ。昨夜、猪狩君がずっと寡黙なのをさすがに不審に思って、占ってみたんだ。そうしたら、人狼だった、というわけだよ。

猪狩:
な……! そ、そんなはずないです。だって……だって、僕は!

京極:
そうだねえ、俺からしてみれば、今まで占っていないのは君と、早乙女ちゃん、そして大神ちゃんの三人だった。その中で誰を占おうか迷ったんだけど。大神ちゃんは村のために積極的に発言してくれてるし、初めは早乙女ちゃんにしようかと思ったんだけどね。ほら、彼女は初日に占部さんに占われて白だと言われてたけど、もしかすると囲われてるんじゃないかと思ったわけだ。だけど、俺に対して反抗的なのはあまりにもわかりやすすぎるかと思ってね。一番色が見えなかったのは、寡黙気味な君だったわけだよ。

猪狩:
あなた……まさか、狂人だったんですか? そ、そんな……じゃ、じゃあ、僕は!

京極:
おやおや、この期に及んでまだ演技を続けるんだ? みっともないったらありゃしない。さあて、残りの人狼の数は……このルールだとわからないんだっけ。

大神:
そうですね。霊媒師でもいたらよかったんですけど、どうやらいないみたいです。人狼が村人と同数になったら村の負けですから、今日が勝負ですね。今まで吊った中に人狼がいなかった場合、ここで村人を吊ってしまうと四人になります。そのうち二人が人狼なら、この村は終わってしまいますね。

京極:
ああ、そっか。まあ、俺からしてみれば猪狩君は確実として、もう一人は初日に占部さんに囲われた早乙女ちゃんでしょ。明日は彼女を吊ってあげてね。

早乙女:
ちょっと! さっきから聞いていれば好き勝手言って! でたらめも大概にしなさいよ! 私は占部が真の占い師だと思ってるわ。こいつが言ってるのは適当よ!

京極:
じゃあ、早乙女ちゃんは誰が人狼だと思うの?

早乙女:
誰って……そうねえ。とりあえずあんたの占いが信用できないのは確実だけど、人狼だとも思えないし。甲斐は確実に村人だし。う~ん……あれ?

大神:
私情は挟まず、冷静に判断してくださいね。日没まで、あまり時間がありません。今日の選択を誤れば……今まで処刑した二人が村人だった場合、まだここには二匹の人狼が残っていることになるんですから。確実に一匹は吊らないとだめです。

甲斐:
なあなあ。よくわかんねえけどさ、つまり死んだ占部を信じるか、京極さんを信じるかってことだよな。俺は両方に白出しされてるから、ぶっちゃけどっちでもいいや。

早乙女:
ばっ……あんたね! まさかそこまでバカだとは思わなかったわ。人の生死が懸かってんのよ。これは普通の人狼ゲームじゃないの。最初にわけのわからない案内人が言ってたじゃない。この世界で起きることは全て現実だって。それに、あんたも見たでしょ? 実際に人が死んでるのよ! もしかしてあんたも感覚がマヒして狂ってきちゃったの? あんただって、今夜噛まれて死ぬかもしれないのよ!

甲斐:
はあ? うるせえな。こういうのは直感を信じた方が早いって、確かじっちゃんが言ってたんだよ。頭でっかちは黙ってろよ。

早乙女:
なんですって?

京極:
はいはい、そこまでにしとこうね。ちなみに、早乙女ちゃん。俺が狂人だとする証拠は何かな? 俺の何日目のどういう発言が怪しかったか、具体的に教えてくれる?

早乙女:
そんなこと言われても、すぐにはぱっと出てこないって言うか。はあ……そういうところ、ほんとむかつく野郎だわ。

大神:
ですが、早乙女さんは京極さんが狂人もしくは人狼だと考えているんですよね。

早乙女:
そうね。でも、こいつが人狼だった場合は狂人どこいったってなるし、だから絶対狂人だと思うんだけど。こいつを吊ったところで、人狼が残り二匹だった場合は全く意味ないのよね。ああ~……もうわかんないや。

甲斐:
お前らさっきからさ~、何難しいことくっちゃべってんだよ。いいじゃん、黒出てるんだから黒吊っとけば。何が問題なんだよ?

早乙女:
あ~、もうあんたは! 人の話聞いてた? その黒を出した張本人が、偽占い師かもしれないって言ってんのよ。……はあ。なんだか頭痛くなってきた。そういえば、狩人ってまだ生きてるのかしら。生きてるなら、占い師を守っているはずよね?

大神:
狩人が生きているなら、おそらく京極さんを真の占い師と見て彼を守っていたか、もしくは今までの処刑か襲撃で死んでいるかと思われます。

甲斐:
はあ。それ、そんなに大事?たぶん、もう死んでるんじゃね? つか、狩人って自分が狩人だって言っちゃダメなのか?

京極:
狩人の生死が分からない方が、村にとっては都合がいいんだよ。狩人が生きているかもしれない、と思うと狼も占い師を襲撃しにくいからね。

猪狩:
ああっ……! ど、どうしよう。このままじゃ、吊られてしまうのに……!

京極:
じゃあ、そろそろ決めないとね。俺は今日猪狩君を吊りたいんだけど、みんなの意見はどう?

大神:
ちょ、ちょっと。京極さん、ストップです。

京極:
なんだい、大神ちゃん。

大神:
なんかあなたが話すと、ペースに乗せられてしまうというか……心配なんですよね。ここでの話を取りまとめるのは、確実に村側である人にお願いしたいんですが。

甲斐:
はいはい、なんでもいいんじゃねえの。どうせ俺吊られねえし。ーって、俺が進行しろってことか?!

早乙女:
そうよ。しっかりやんなさいよ。

甲斐:
ええ~……。俺、そういうの苦手なんですけど。なあなあ、京極さん。頼むよお~!

早乙女:
ちょっと! 京極は狂人よ、あんた人に頼ってばかりいないで、自分も考えなさいよね!

京極:
ま、大神ちゃんの気持ちもわかるけどね。今はそんな誘導尋問はしないよ? 俺が聞きたいのはただ一つ。俺に従って今日猪狩君を吊るか、それとも他に怪しい奴がいるなら、そいつを吊るかだ。じゃ、一人ずつ意見どうぞ。

甲斐:
俺は京極さんの言う通り、猪狩君だと思う。理由は、京極さんが占っても今までは白しか出てなかったけど、やっと今日人狼が出てきたから。こう……人数が少なくなった中で人狼だって言うなんて、本当に占ってないとできないと思うんだよな。あとは、直感。以上!

早乙女:
私は死んだ占部が真の占い師で、京極は狂人だと思ってるけど……こいつを吊ったとしても、まだ人狼が二匹残っていた場合は、負けてしまうのよね。う~ん……。

大神:
私も特別京極さんに肩入れしているわけではないですが、確かに猪狩さんは敵とも味方とも判断がつきませんね。村のためになる発言も落とさないので、冷たい言い方になりますが吊られても仕方ないかと思います。

早乙女:
う~ん。そう、大神さんは論理的なんだよね。村のことをちゃんと考えてるって言うか。で、甲斐は確実に村人だし。ん~……人狼がすでに一匹は死んでることに賭けて、やっぱり京極……かしら。

京極:
ふむ。じゃあ、早乙女ちゃんは俺。甲斐君、大神ちゃん、俺は猪狩君か。決まったね。猪狩君、何か言い残すことはある?

猪狩:
えっ? ……そ、そんな。僕を吊るなんて……正気ですか? (小声で)僕、あなたを守っていたのに。ああ、でもそれを言ってはいけないんだよな。……わかりました。それが村のためになるなら、僕は構いません。構いません、けど……。なんだかすごく、虚しいです。

京極:
ふふ……含みのある言い方だなあ。でも、ルールはルール。時間は時間だ。ごめんね。悪く思わないでね、猪狩君。

甲斐:
あの……ほんと、悪いな。でも、これも全部俺たちが生き残るため、って言うか(小声で)……ああ、なんか俺、もう何も感じなくなってきてるかもしれないな。

早乙女:
ごめん! あたしがもっとちゃんと説得できてれば……ごめん、猪狩! ほんと、ごめんね!!

大神:
とても残念ですが……割り切らなければ皆が助かりません。ごめんなさいね。ご冥福を、お祈りしています。

京極:
では、処刑します。

猪狩:
さ……よ、なら。

―(猪狩、処刑される)

ー(間)

甲斐:
よし、これでゲーム終了か。ふう~長かった。(扉を開けようとする)……はあ? 嘘だろ、ドアが……開かない。ってことは、まだ続いてるってことか?

京極:
ああ、なるほど。どうやらまだ一匹残っているようですね。

早乙女:
はっ?! もう、何が何なのかわかんないわよ! やっぱり京極、あんただったのね?

甲斐:
え? 京極さんはこれで終わらなかったら早乙女だって言ってなかったっけ? え? ……え? どういうこと?

大神:
ふふ……おかしいわねえ。

―(間)

大神:
さあて、夜か。今日は誰を噛もうかなあ。邪魔な占い師はもういないし……あいつにするか。ひひひっ。

早乙女:
(混乱したように)なんで? ああ、もう……こんなの絶対おかしいよ! じゃああいつが人狼? いや、もう全部嫌! もう疲れたよ。人狼なんているわけないじゃん。これは妄想。これは悪夢。はは……あはは。あれ? でも、昨日の処刑は? おとといの噛まれた死体は? ああ……ああ! 違う違う違う違う違う違う! みんな嘘をついてる。もう誰も信用できない……。

大神:
こんばんは。

早乙女:
なっ?どうしてあんたが……! え、何急に。どうしたの? 夜は出歩かないってルールだったよね。ははっ、もう……どうしちゃったの?

大神:
そうですね。人狼が出歩いてるから危ないですよね。

早乙女:
うんうん。そうよ。本当に危ないから早く戻って……て、え? (大神を見る)ひっ! そ、そそそその牙! その爪……な、ななななんで? 嘘だよね? はは……あはは。冗談だよね? ちょ、ま、ま待って! だ、だだだ誰か! 助けー

大神:
(襲い掛かる音、自由に)がるるるるるるるるる!ぐしゃああああああ!

早乙女:
(絶叫)きゃあああああああああああああああ!

ー(翌朝)

大神:
さ、早乙女さん……ぐすっ。ひ、ひどい。

甲斐:
さ、早乙女! く……くそっ!まさかまだ人狼が……ん ?あれ? 京極さん、昨日は早乙女が人狼だって言ってたよね。え、おかしくない?

大神:
ああ……許せない。いったい誰がこんなことを……。(もったいつけた後に)ーま、私なんだけどね。

京極:
ぷっ! ははははは……あっははははははは! いやあ、大した役者だ。恐れ入ったよ。

大神:
あら、どうもありがとう。

甲斐:
は? ……お前ら何話してんだ? ちょ、おい京極さん! 説明してくれよ。なんで人狼のはずの早乙女が死んでるんだ? もうわけわかんねえよ。あ、そうだ。今日の占い結果は? ねえ、京極さん! ねえってば!

京極:
はあ? 君。まさか俺のことまだ占い師だと思ってんの? あっははははは! バカだねえ。彼女は人狼、俺は狂人だよ。

甲斐:
な……う、嘘だろ? 冗談だろ?!

京極:
ふふ……良い顔だねえ。ねえねえ、今どんな気持ち?君みたいな騙されやすい奴が村人でほんと助かったよ。今日は君を吊って、この村はおしまい。あははははははは!

甲斐:
ち…ちくしょうっ! なんで気付かなかったんだ!

大神:
ほんとにね。私が親切に何度も注意してあげたのに、君ったら全然聞く耳を持たないんだもの。あっはははは、おかしい! はあ……笑ったらお腹すいてきちゃった。ねえ、甲斐君のことは、処刑じゃなくて噛んでもいい?

京極:
だめだよ。まったく君ときたら……。ここではルールが絶対だ。昼間は処刑と決まってるんだよ。ああ、そうだ。殺した後に噛んだらだめなのかい?

大神:
はあ~、わかってないわね。いい? 人間が絶望して、恐怖におびえながら逃げ回るのを追い詰めて、噛みついた皮膚から血しぶきが噴き出るのが面白いんじゃない。すでに死んでたら何にも楽しくないわよ。私はもっと、苦しみもだえる姿が見たいの!

甲斐:
や……やめろ! こっちに来るな、バケモンが!!

京極:
おお、こわいこわい。俺もそのうち噛んでもらおうかと思ったけど、これは君に協力して、誰かをエサにした方が楽しそうだねえ。

大神:
あなたはまずそうだから、こっちから願い下げだわ。

京極:
え~……せっかく協力してあげたのに、ひどいなあ。

大神:
そのまんまの意味よ。狂った血はおいしくないの。私が好きなのは……人間の生き生きした美味しい血よ。

京極:
俺も一応人間なんだけどなあ。

甲斐:
ひ……ひい! この人殺し! キチガイ! これ以上近づいたら……ど、どうなるかわかってるんだろうな? け、警察呼ぶぞ!

京極:
キチガイは誉め言葉だね。どうもありがとう。それに、残念ながらここには電波は届きません。さ、これ以上おしゃべりをしていても仕方がない。さっさと片付けてここから出ようか。

大神:
残念だけど、それもそうね。とっても楽しませてもらったわ。じゃあ、甲斐君。さようなら。

甲斐:
い……いやだああ! 死にたくない!! なんだよ、もうなんなんだよ! ああ……夢であってくれ! せっかく生きて帰れると思ったのに! やめろ、来るな! たすけ、誰か助けー(絶叫)ぎゃあああああああ!!

―(間)

猪狩(案内人):

(案内人)人狼サイド、WIN。お疲れさまでした。いい仕事ぶりでしたねえ。きちんと役割を果たせたようで、何よりです。ああ、そうそう。命は一つしかありませんから、次のゲームに参加されるなら、慎重にお願いしますね。文字通りの真剣勝負なんですから。……え? 死んだ彼らですか。さあ、知りませんよ。ここで起きることはすべて現実だと、最初にそう申し上げたでしょう? ははっ、ご冗談を。さて、カードを引いてください。次はどんな役割が待っているんでしょうか? 今度はあなたが、逃げまどい、恐怖におびえる番かもしれませんよ? ふふ……それでは、またここでお会いできるのを楽しみにしてますね。

-Fin.

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