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朽ちゆくハイドランジア

―時間と共にうつろう心は誰にも止められない。

もうすぐ来るであろうほろ苦い失恋を一人噛み締める語り手の独白。

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・一人称、語尾変更、アドリブ→○​​

◇登場人物◇

私:

(性別不問)

恋人との別れを予感している。悲嘆に暮れつつも、あきらめにも似た気持ちで受け入れようとしている。

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始まりがあれば必ず終わりが訪れる。それは自然の摂理だと痛いほどわかっていたはずだった。
でもいざ目の前にすると、甘い思い出は刃となって心臓をえぐるように突き刺さる。

何も嫌われたわけでも、別れを告げられたわけでもなかった。だが、せわしさや慣れを抜きにしても、あの人が私への興味を失っているのは明らかだった。

「好きだ。」「愛している。」「結婚しよう。」
甘い言葉や新鮮なときめきに胸を高鳴らせ、初めて会ったのにも関わらず、俗に言う「運命」を感じた。

けれども、時の流れは残酷だ。朝露がきらめくと日が昇り、夕暮れになればやがて暗い夜が来る。朝に芽生え、色付いた紫陽花は彩りを変えながらも、いつかは色褪せ朽ち果てる。

……バカみたいだ。
こんな苦い思いを味わうくらいなら、好きにならなければ良かった、と思うのに、楽しかった思い出ばかりが溢れて、今との落差にたまらなく苦しくなる。

あなたは優しいから、きっと自分から別れを告げるようなことはしないのだろう。それは私にとっては飼い殺しのようなもので……あなたは本当に残酷だ。

でもそれは私だって同じ。あなたを手放してしまったら、名前のない関係に戻ってしまう。それが嫌で、必死につなぎ止めている。そうやって思い出に縋り付いたまま、何も出来ずにいる。

いくら私が努力してあなたの好みになろうと、あなたの機嫌を取ろうと、一度色褪せた気持ちはもう二度と戻ることはない。

あなたとの沈黙が増えていく度に、別れが近づいてくるようで、たまらなく怖くなる。

 

それでも。
「あんなに愛してくれたのに」、「好きだと言ってくれたのに。」そうなじるのは簡単だ。
だが全ては移ろいゆくもの。愛の熱もいつかは覚め、恋の魔法もいつかは溶ける。恋人たちがいつまでも幸せに暮らすなんて、そんなものは幻想に過ぎないのだ。

最後の時が来たら、私はあなたに伝えよう。
「今までありがとう。私を好きになってくれてありがとう」と。せめてもの笑顔で。

痛みに慣れた心は既に何も感じなくなっていたとしても、別れの時はきっと泣いているのだろう。


それでいい。私はこの刹那の幸せをそっと胸の中に仕舞って生きていくのだから。

​ーFin

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